白亜の宮殿がうっすらと色合いを変えはじめた もうすぐ夕焼けがやってくる 雲の上にあるかつて人と竜が共に暮らしたという大地 今は竜達の気配だけが周囲にあふれている ニーズヘッグの力に飲み込まれた彼の足取りを探したい 何か解決策の糸口を探したいとアルフィノに告げてここにやってきてもう5日になる 竜の巣に気配はなく、モーグリの王も当然分かるはずもなく フレーズヴェルクは姿を見せない 彼女の事を聞いて見たくはあったけれど、もう今更だろう。意味もない 後は何を探せばいいのか・・・と考えてはいたが 妙にこの土地を動く気になれなかった あの夜キャンプを張った広場の大きな瓦礫の上に腰を落とした 空が益々赤みを帯びていく 見上げればからっぽの空 そのまま岩の上に寝転ぶ あの男の事を思い出す 勇猛果敢でまだ若いはずなのに肝の据わった騎士そのくせ変わり者 情熱的で積極的なくせにどこか距離があって、実直そうだがそこはかとなく感じる空虚感 人には大抵どこかにからっぽの部分があって そこから響く音は穏やかで 彼は人よりもその部分が大きい気がした そして私は彼のそうした部分に居心地の良さを感じていた 水平線を眺める心地のような静かなものを フォンフォンフォンとリンクシェルが鳴った ━やあ、今何をしているんだい? アルフィノだった 連絡もせずにいたから心配になったのだろうか ドラヴァニア雲海に来ているがめぼしい情報はなかったよ、と言おうとして 広場の入り口の気配に気がついた 相変わらず相手が年上であろうが見守るような余裕のある微笑み ━きっと此処にいるんだろうと思ったよ そうだろうね。 もし私が君を探すならきっとここに来ただろうね それ以上は問うことなく私の横に腰掛けた 名家の御曹司で大賢人の孫で11歳で大学に入った天才 もう違う種族の生き物のようにそういうものなのだなとしか思わなかったが 彼もまだ16の少年だ 挫折もあったが、これからも彼のからっぽの部分にはきっと様々なものが注ぎ込まれるだろう そうして自分の中のその部分を知っていくんだろう きっとそれは大きく広いだろうね しばらく無言のまま水平線に沈んでいく夕日を眺めていた キャンプをするなら焚き火をしないとね。薪を拾ってくるかい? と少しからかってみた ━任せておきたまえ 苦笑しながら大げさに腕を広げたので笑ってしまった アサー天空廊にある建物にねぐらを作ってあるんだ。そこに行こうと促す そうしよう、とすんなり従ったということは もうしばらくここにいてもよさそうだ


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